経営戦略(business strategy)
企業の経営目的を達成するための包括的な手段として、企業の外部および内部の環境の変化に対して経営活動を全体として計画的に適応させるための決定ルールを経営戦略という。チャンドラー(A.Chandler)は、経営戦略を定義して、「企業の長期的目的および目標の決定、これらの目標を実行するために必要な活動方向と資源配分の決定である」とし、アンドルース(K.Andrews)は、「目的、目標およびこれらの目標を達成すための主要な方針と計画のパターンであり、どのような事業に従事しあるいは従事すべきか、どのような種類の会社にし、あるいはすべきかを定義する形で表明される」と述べている。両者において、経営目的と経営戦略の区分が行われていないのに対して、アンゾフ(H.Ansoff)は、「経営戦略は、主として企業の外部的問題であり、外部環境の変化に企業を全体として適応させるために、参入すべき製品-市場構造の決定である」とし、経営戦略の概念に経営目的を含ませないことを特色としている。
(1)経営戦略は、経営目的を達成するための包括的な手段であり、経営目的とは区別される。しかし、両者は密接な相互関係にあり、経営戦略の決定を通じて経営目的の達成可能性が評価される。
(2)経営戦略は、環境適応の機能をもっている。アンゾフは、主として企業の外部環境の変化への適応に限定し、製品-市場戦略を取り上げているが、企業の内部環境、たとえば収益性の低下、操業度の低下、人材の過剰などは、つねに経営戦略の対象となる。経営戦略は企業の内部環境の変化に適応するための内部戦略(internal strategy)と、企業の外部環境の変化に適応するための外部戦略(external strategy)に分けることができる。
(3)経営戦略は、企業が将来直面する戦略的問題や戦略的機会の利用によって、企業は環境の変化に適応していくのである。アンゾフは、企業がどのような製品をどのような市場に販売していくかを決定する製品-市場戦略を経営戦略の主な内容として取り扱うが、製品-市場戦略を企業の成長戦略とすれば、経営戦略は、大きく成長戦略(growth strategy)と競争戦略(competitive strategy)に分けられる。前者は、企業が将来従事すべき製品-市場構造を決定するものであり、それは、市場浸透戦略、市場開発戦略、製品開発戦略、多角化戦略からなっている。後者は、製品-市場において競争企業に対して競争的優位を確保するための経営戦略であり、それは、製品差別化戦略、占拠率拡大戦略、製品ライフ・サイクル戦略、市場細分化戦略などからなっている。
(4)経営戦略は、各部門の経営活動を全体として総合する機能をもっている。企業のもてる資源には限りがあるから、各部門の活動を特定の方向に集中化させることによって、資源利用の最大効率が達成される。その目的のために、経営戦略は、企業戦略(corporate strategy)⇒事業部戦略(divisional strategy)⇒職能的戦略(functional strategy)というハイアラーキーをもっている。企業戦略は、企業の全体を環境の変化に適応させるための経営戦略であり、製品-市場戦略、財務戦略、人材戦略、などが主な内容となしている。事業部戦略は、企業戦略の下位戦略であり、その製品-市場における競争戦略がその主な内容をなしている。職能的戦略は、事業部戦略の下位戦略であり、マーケティング戦略、生産戦略、購買戦略などからなっている。
(6)経営戦略は、情報収集を効率化するための決定ルールをなしている。決定ルールは、選択ルールであるとともに、探求ルールであり、戦略の決定によって、各部門の情報収集活動は特定の方向に方向付けられ、情報の効率化をもたらす。
参照 ⇒【競争戦略】【製品市場戦略】




