競争戦略(competitive strategy)
競争戦略は、企業の従事している特定の製品-市場分野において競争企業に対して競争的優位に立つことによって企業の経営目的を達成していくための戦略である。製品が多角化している企業では、競争戦略は、各製品-市場ごとに形成される。競争的優位に立つためには、新しい市場機会を発見し、これに対して自社の独特の能力を結びつけていくことが、その基本原理をなしている。まず、自社の独特の能力を評価し、認識するためには、自社の経営資源(財務資源、物的資源、人的資源、技術資源、生産資源、マーケティング資源など)の分析を行い、自社の長所と短所を評価し、競争的特性をもった独自の能力やノウハウを確認する必要がある。次いで、新しい市場機会を発見するために、市場調査、製品ライフ・サイクル調査、競争環境調査、技術動向調査によって情報を収集する必要がある。
(1)市場調査;この場合の市場調査は、あくまで新しい市場機会を発見するためであり、まず市場を細分化して情報を収集し、未充足の顧客のニーズを発見することが必要である。市場細分化は、性別、年齢別などの人口学的基準、所得別、社会階層別などの社経済的基準、地域別の基準、購買動機別、心理的欲求別の基準(および、業種別事業ニーズ〔飲食業への畳表替え24時間サービ〕)などで行われる。とくに、成長性のある細分市場について情報を収集し、その細分市場において現在の製品によって充足されていない顧客のニーズを発見する。未充足の顧客ニーズを満たすために、製品開発戦略、販売促進戦略、配給経路戦略などが競争戦略として形成される。市場の細分化が行われない場合でも、消費者の嗜好、購買動機や用途などの変化について、市場調査を通じて情報を収集し、新しい市場機会を発見する。
(2)製品ライフ・サイクル調査;製品ライフ・サイクルは、導入期-成長期-成熟期-衰退期-の各局面に分けられる。導入期には、用途開発や製品革新の戦略が重要であり、成長期には後発メーカーの参入が行われるので、自社のブランドに対する消費者の選好を強めるための広告や販売促進戦略や配給経路の開拓が必要とされる。成熟期には、需要の成長性は鈍化するので、コスト・ダウンのための工程革新、市場細分化による新品種の追加戦略が重要となる。衰退期に入ると、競争はますます激化し、収益性も低下するので、合併、買収の戦略、赤字製品の廃棄あるいは撤収戦略が考慮されなくてはならない。このように、製品のライフ・サイクルの各局面によって、競争状態も異なり、それに対処するための競争戦略も異なるので、現存の各製品がライフ・サイクルのどのような局面にあるかについて情報を収集する必要がある。
(3)競争環境調査;各製品-市場における競争状態と競争企業の現在および将来の競争戦略に対応するために、それについて情報を収集する。
(4)技術動向調査;特定の製品-市場における技術革新は、企業にとって脅威となる場合もあるが、新しい市場機を提供することにもなる。技術革新は、製品革新、材料革新と工程革新からなっている。製品の導入期や成長期には、製品の改良、新デザイン開発などの製品革新が必要とされる。製品が成熟期に入ると、コスト・ダウンのための工程革新やVA(価値分析)の適用が重要な競争戦略となる。
競争戦略には、次のようなタイプがある。
(1)占拠率拡大戦略;市場占拠率が高いほど収益性は高いので、占拠率の拡大を目的とした競争戦略を占拠率拡大戦略という。具体的には、製品ラインの拡大、製品開発、多品種政策、販売促進戦略、価格戦略、サービス戦略、配給経路戦略などがある。各事業分野の特性や製品市場の発展段階によって、有効な占拠率拡大戦略は異なる。製品の導入期には、製品開発や品質競争が重要であり、成長期の後半になると、製品ラインの拡大、多品種政策、販売促進戦略、配給経路の系列化が重要な戦略となる。
(2)市場細分化戦略;製品が成熟期に入ると、市場を細分化して各細分市場に対して固有の製品開発、広告、販売促進の展開が有効な競争戦略となる。
(3)利益管理戦略;製品が成熟期に入ると、使用総資本利益率の増大をはかるための利益管理戦略がとられてくる。それには、コスト・ダウンのための工程革新、VAの適用、製品ミックス戦略、赤字製品の整理、経費削減などがある。
(4)市場集中化戦略;企業の競争地位が弱く、占拠率は、トップ・メーカーの売上高の15~20%に達しないような場合、市場を細分化して、自社の独特の能力にもっとも適合した特定の細分化市場を選択し、それに対して製品計画や販売促進を集中していく市場集中戦略が有効である。
参照 ⇒【市場細分化戦略】




