経営の社会的責任(social responsibility of business)
経営の社会的責任とは、企業の意思決定において、単純な利潤原則のみを決定基準とするのではなくて、社会の福祉を決定基準の一つとしていくことをさしている。一般に、社会的責任の具体的内容として、(1)公害防止、環境改善、(2)地域社会住民の福祉への協力、(3)国民社会福祉への貢献、(4)消費者利益の保護、(5)従業員の福祉や生きがいの要求の充足などがあげられる。企業の意思決定は、経営目的や経営戦略を決定する目的決定と、経営目的や経営戦略を実行するための手段を選択する手段決定に分けられるが、社会的責任は、目的決定と手段決定の両方にかかわることに注意を要する。目的決定の面では、企業はたんに経済的目的を追求するだけでなく、非経済的目的として社会的責任の目的を設定し、そのための社会的戦略として公害防止計画、利益還元計画や社会市場計画を決定していくことを社会的責任は要求する。手段決定の面では、選択される手段が人間価値や社会価値に及ぼす影響を考慮することを社会的責任は要求する。労働強化や労働条件の劣悪化による能率の向上、消費者を欺瞞する広告や価格政策、政治家への賄賂工作による販路の獲得などは、「目的のために手段を選ばず」であり、経営の社会的責任に反する行為である。
マクロの国民経済の観点から企業の社会的責任の根拠として、(1)独占または寡占の進展にともなう市場の自動調節力の弱体化、すなわち市場の不完全性が、労働者、消費者と企業との間の利害の自然予定的な調和を著しく阻害しているという市場不完全説。(2)企業の利潤追求によって生じる外部不経済(例、公害)を企業の社会的費用として把握し、企業のコストに内部化することが必要であるとする外部不経済説。③企業の経済活動は、すべての人に対してシビル・ミニマム(civil minimum)-最適福祉基準を確保するように運営されなくてはならないとするシビル・ミニマム説などがある。ミクロ経済の立場から企業の社会的責任を説明する根拠としては、オープン・システム論がある。企業はオープン・システムとして、環境から人、原料、資金、情報などをインプットとして受け入れ、それを製品やサービスに転換し、アウトプットとして環境に提供している。インプットとアウトプットによって企業システムと環境とは相互作用関係にある。たとえば、環境で育てられ、教育された人が企業にインプットされるのであるから、社会の教育環境、研究環境や衛生環境、医療環境などが、企業の人材の肉体的、精神的質を決定する。社会または業界の技術革新の水準は、情報として企業にインプットされ、企業の技術水準を決定づける。このように、企業と環境との間に相互作用があるところから、企業の存続のためには環境に対する社会的責任を企業が負うことが要請される。
経営の社会的責任に対する反対論として、自由経済論者のフリードマン(M.Friedman)は、それは、自由価格機構をゆがめ、株主の私的所有権を侵害するものとし、ハイエク(F.A.Hayek)は、経済以外の領域に企業の危険な私的権力を増大させ、自由企業体制を崩壊させるとしている。
参照 ⇒【企業の社会的責任】




