資本構造(capital structure)
会社の資本構造は、貸借対照表に表示される企業資本(使用総資本)の構造をさしており、それは、企業資本の調達源泉の違いとその構成をあらわしており、自己資本と他人資本からなっている。
両者からなる資本構造の尺度として、
負債比率=負債/自己資本
あるいは、
自己資本比率=自己資本/使用総資本
が用いられる。資本構造のいかんは、(1)資本コスト、(2)自己資本利益率、(3)資本危険や財務弾力性に対して重大な影響をもっている。
(1)資本コスト
資本コストの概念やその算定式は複雑であるが、資本構造が資本コストを決定する一要因を
なすことを明らかにするために、会社の総合資本コストは、次の式で算定するものとする。
〔自己資本コスト〕 〔他人資本コスト〕
総合資本コスト={配当金/(1-税率)×自己資本比率+利子率×他人資本比率}/100
自己資本と他人資本の構成が50:50として、配当率20%、利益課税率を0.5とし、負債に対する平均支払利子率を8%とした場合、自己資本コストは20%であるのに対して、他人資本コストは4%であり、総合資本コストは24%である。他の条件を同じとして、資本構造を自己資本30:他人資本70に変更した場合、自己資本コストは12%となり、他人資本コストは5.6%となり、総合資本コストは17.6%に低下する。資本構造の上で他人資本の比重を高めることによって、総資本コストは一定の範囲まで低下する。しかし、一定の範囲を超えると、危険増大の原則が働いてくることに注意を要する。
(2)自己資本利益率
他人資本の比重が増え、負債比率が高くなることによって、財務上のテコ(financial leverage)の
原理によって、自己資本利益率は拡大される。
(3)危険増大の原則
負債比率が高くなれば、財務上のテコの原理によって、自己資本利益率は拡大されるが、
不況期に入って、使用総資本に対する利子支払前利益率が利子率を下回る場合、
利益率は急減に収縮し、赤字に陥る資本危険が増大する。これを資本危険増大の原則という。
(4)財務上の弾力性
負債比率が高い資本構造の下では、企業が不況や経営危機に陥った場合、
それに対する抵抗力が弱いために、財務上の弾力性が失われ、経営危険度が一挙に増大する。
以上の理由から、伝統的には、適正な資本構造は、自己資本比率50%、負債比率100%が基準とされてきたが、戦後の高度成長期における設備投資の加速度化、インフレーションへの対応、低賃金コストの利用、財務上のテコの利用による自己資本利益率の維持などの目的から、わが国の企業の自己資本比率は20%台に低下している。とくに、インフレ下でおこる設備の減価償却不足に対して、借入金調達によって生ずる債務者利潤をもって一部補う操作が行われてきた。
また、インフレ下でおこる秘密積立金(含み資産)を自己資本に加えると、自己資本比率が示すほどわが国の企業の資本構造は悪化していないともいえる。しかし、低成長経済下では、営業利益率は低下し、利子の負担は増大するので、資本構造の健全化は、低成長経済下の重要な経営目標の一つとされている。
参照⇒【財務上のテコ】【減価償却不足】【負債比率】




