条件適合理論(contingency theory)の用語解説

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用語

条件適合理論(contingency theory)

解説

伝統的組織論以来、組織論は、組織のおかれた環境や条件に関係なく、あらゆる組織に共通して有効と認められる組織原則の確立に力を注いできた。このような普遍主義を否定して、あらゆる環境に対して唯一最善の組織はあり得ないのであって、「環境が異なれば、有効な組織は異なる」という立場をとるのが、組織の条件適合理論、あるいは単に組織の条件理論ともいわれる。組織の有効性は、技術や市場という環境に依存する(contingent upon)という立場である。まず、イギリスのバーンズ=ストーカー(T.Burns and G.M.Stalker)は、安定した環境の下では各人の職務、権限、責任を明確化した機械的組織が有効であるのに対して、不安定な環境の下では流動的な有機的組織が有効であることを実証した。また、ウッドワード(J.Woodward)は技術システムを技術の高度化の程度によって、(1)個別受注生産、(2)量産システム、(3)装置生産にわけて、技術システムと組織との関係を調査した結果として、(1)技術度の中位に位置する量産システムにおいて、職格と権限が明確化され、ライン・スタッフ組織をとり、命令系統を明確化した機械的組織が有効である。(2)技術度の両極にある個別受注生産と装置生産において、権限と責任は明確ではなく、意思決定の権限と責任が高度に委譲され、参加的経営が行われる有機的組織が有効である。ことを実証した。
このような立場は、はじめ、イギリスで生まれたが、アメリカの管理論にも導入され、ローレンス=ローシュ(P.R.Lawrence and J.W.Lorsch)は、企業を構成する各部門、すなわち製造部門、営業部門、研究開発部門はそれぞれ異なる環境に当面しているのであるから、各部門の組織構造、リーダーシップや構成員の志向性は、それぞれ異なる環境に適応して特殊化した上で統合化が行われている方が、組織の効率が高いことを立証している。研究開発部門は科学環境に、営業部門は市場環境に、製造部門は技術環境に当面している。それらの環境の相違は、(1)環境の変化の速度、(2)環境情報の不確実性、(3)情報のフィードバックのタイムスパンによってはかられる。組織の相違は、(1)組織構造、(2)成員の対人志向性(命令的リーダーシップか参加的リーダーシップか)、(3)成員の時間志向性(長期的、中期的、短期的か)、(4)成員の目標志向性(長期的、中期的、短期的か)によって測定している。そして、製造部門は、組織は高度に構造化し、命令的リーダーシップをとり、時間志向性や目標志向性は短期的であるのに対して、研究部門では、組織の構造化は低く、参加的経営が行われ、時間志向性や目標志向性は長期的であり、そして営業部門は、両者の間の中間になるのが、有効な組織であると結論づけている。
ザルトマン=ダンカンは、イノベーションと組織との関係を調査して、イノベーションの過程を開発過程(development process)と実施過程(implementation process)とに分け、前者において有機的組織、後者において機械的組織が有効であると結論づけている。
組織の条件適合理論は、組織と技術や市場環境との適合性に注目し、多くの実証研究を刺激し、組織設計にも実践的指針を提供しているが、次のような批判が成り立つ。
 (1)構造-機能主義の影響を受けて、組織のとらえ方が形式的であり、組織の実体的特徴をとらえていないことである。たとえば、組織の構造的特徴として、①集権化(centralization)、②公式化(formalization)―どの程度規則化や手続化が行われているか―、③階層化(stratification)―管理段階の数が多いか少ないか―などの指標が測定に用いられるが、組織の効率や職務満足に影響するのは、このような形式的な組織構造ではなく、むしろ意思決定やコミュニケーション、相互作用のあり方である組織過程ではないかという批判である。また、集権化か分権化かという測定尺度にしても、同じ分権化であっても、事業部制による分権化か職能制分権化かのいずれをとるかによって、意思決定やコミュニケーションのあり方は大きく変わるが、そのような組織の実体的特徴の測定が行われていないという問題がある。
 (2)オープン・システムのアナロジーにとらわれて、組織は環境条件の客観的要請に自然に適応するようにみなされ、組織と環境との間に行為主体の意思決定が介在している事実を見逃していることである。経営者は、環境に適応するために企業戦略を決定し、その戦略の実行を確保するように組織設計を行なう。行為主体の経営理念や方針の違いによって、同じ環境に対しても異なった戦略が立てられ、異なった組織形態を生じてくる。したがって、同じ環境が直接的に同じ組織構造を決めてくるように考える条件適合理論は、誤りであるといえる。
 (3)同じ技術や市場環境においても、組織構造の自由な選択の幅は大きいということである。量産システムでは機械的組織が有効であるとされるが、量産システムをとっている電機メーカーでも、事業部制による分権管理が行われ、プロジェクト・チームが活用され、作業者の自主管理が行われ、有機的組織を実践している企業はわが国では多く、しかも好業績をあげている。環境が組織を決定づけるという考えは、組織の現状に甘んじるという宿命的、保守的態度に通じている。
 (4)技術システムや市場環境を所与として、組織と環境との適合性を問題にするが、企業は環境を選択したり、環境を変えたりする選択の自由をもっている。変化の激しい不安定な市場環境に対しては製品差別やフル・ライン多角化の戦略をとって市場環境の安定化をはかるのであって、その戦略の成否は企業によって差がある。また、製品が多様化し、複雑性や不確実性が高い市場環境に対しては、企業は製品別に事業部制を分割し、各事業部の当面する市場環境を単純化し、不確実性を削減することができる。企業にとって環境は所与でなく、環境を選択できるかぎり、同じ環境に直接的に同じ組織構造が適合するとする立論は誤りである。
 (5)組織の効率を組織設計の唯一の基準とし、成員の職務満足などを考慮しないために、量産システムや製造部門では命令的リーダーシップや機械的組織が有効であるとするが、それは現代の作業員が共有している自己実現の欲求を無視し、また産業民主化という経営に対する社会的要請をも無視するものである。経営の社会性を考慮に入れない研究方法は、たんなる技術論にすぎない。

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