執行役員(corporate officer)
企業の取締役から業務執行を委任され、会社財産の管理・運営を行う役職である。商法上の取締役が、株主総会で選任され、株主に対して責任を持つのに対して、執行役員は企業に雇用され、取締役に対する責任を果たすことが求められる。1997年(平成9年)にソニーの導入後、日本企業の間で急速に浸透した。2002年5月の商法改正により、委員会設置会については、業務執行を担う「執行役」が設置され、それを監督する「取締役」との役割分化が進展した。
株式会社において、取締役会より選任され、業務を執行する役員または使用人をいう。執行役員の名称は、1997年にソニーの取締役会改革で初めて使用されたものである。したがって、2002年改正された商法の執行役とは異なる。
執行役員は、商法第260条第2項第3号の規定により、取締役会で選任または解任される。地位については、契約形態上で「委任契約」と「雇用契約」に分かれる。委任契約の執行役員は、使用人としての地位を喪失する。このため、会社として執行役員の就任を強制できず、本人は就任を拒否することができる。取締役と同じく、対価は報酬となり、不相当額損金不算入となる。同時に、解任はいつでも取締役会の決議で行われるが、取締役兼任執行役員の解任の場合は株主総会の承認を必要とする。雇用契約の執行役員は、使用人の地位のままである。したがって、執行役員の就任は会社の業務命令となり、本人は就任を拒否することができない。対価は賃金で損金算入となる。使用人の地位にあるため、解任には相当の理由が必要となる。
執行役員は、前述のように取締役を兼任することができ、日本の企業では兼任の事例が多い。ただし、代表権をもつ取締役は、雇用契約の執行役員を兼任できない。執行役員は登記事項でなく、定款を変更する必要もない。なお、雇用契約の執行役員では、雇用条件なども大きく変わるため、就業規則で適用除外を規定しておく必要がある。
2002年改正された商法には、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の大企業については、委員会等設置会社を選択することができると規定された。委員会等設置会社では社外取締役を導入した取締役会と取締役会で選任された執行役を置くこととなった。執行役は商法で規定され、株主に対して責任を負うので、株主代表訴訟の対象となる。この点において、商法で規定されず、株主代表訴訟の対象とならない執行役員と基本的に異なる。つまり、執行役はアメリカの商法に規定されている「取締役会で選任された業務担当役員」ということができる。この違いは、執行役員では、執行役に該当する委任契約の執行役員と該当しない雇用契約の執行役員を含んでいるために生ずる。
執行役の権利と義務は、基本的に取締役の権利と義務が適用される。たとえば、忠実義務(商法254条ノ三)、競合取引避止(商法264条)、自己取引の制限(商法265条)、会社以外の第三者に対する責任(商法266条ノ三第1項)などである。一方、執行役員においては、取締役兼任者は商法の規定に従うが、兼任しない者については不明確である。
執行役員制を導入している企業では、代表権をもつ会長や社長も執行役員を兼務しているケースが多い。委員会等設置会社でも、会社を代表する代表執行役は、執行役のなかから取締役会の決議で選任される。代表執行役は1名以上であり、取締役を兼任できる。つまり、取締役会会長は代表執行役も兼ねるので、執行役の監視および業務執行の当事者となる。これは、イギリスを中心として企業統治の大きな矛盾とされ批判されている。2001年以降、アメリカのエンロンおよびワールドコムなどの不正会計問題により、ディレクター(取締役)とオフィサー(執行役)の兼任の是非が焦点となっている。
執行役員は、企業統治における大きな前進ではあるが、透明性と公正さを具備し最適な戦略遂行を実現するには、数多くの課題が残されている。改正商法では、執行役を委任契約に一本化し、株主代表訴訟の対象とした点で、課題の一部を解決している。




