定着率
定着率は、(平均従業員数-離職者数)÷平均従業者数 の式であらわされる。定着率が低いときは、新規募集費、教育訓練費、一人前の技能を身に付けるまでの非能率や不合格率の増加となり、コスト高を生じ、生産計画に齟齬をきたす場合もある。バーナード=サイモン(C.I.Barnard and H.A.Simon)の組織均衡論によれば、従業員に対して誘因と貢献のバランスが維持されれば、従業員はネットの満足を得て、その企業に定着を続けるという基本的命題が出される。これに対して、マーチ=サイモン(J.G.Mach and H.A.Simon)は、従業員の欲求水準の概念を導入し、「移動への欲求」(desire to move)と「移動の知覚された容易度」(perceived ease movement)という二つの概念を用いて、新たな展開を行っている。
ここでは、移動とは、企業から離脱していくことを意味する。まず、「移動したい欲求」は、従業員のもつ不満足によって生ずる。賃金その他の誘因効用が従業員の欲求水準を下回るときは、従業員は、不満足を知覚する。不満足は、「移動したい欲求」の強さをはかる尺度にはなるが、不満足は必ずしも企業からの離脱を意味するものではない。参加を続けるか、離脱するかの決定は、「移動への欲求」ばかりでなく、「移動の容易度」にも依存するからである。不満足な従業員は企業の外部に代替的な再就職の機会の探求を開始する。しかし、不況のため探求の結果としてよりよい代替的機会が発見されないときは、欲求水準が低下し、貢献効用(貢献の主観的価値)は低下する。
移動の容易でないときは、貢献効用を低下させることによって、誘因と貢献がバランスして、従業員は企業に定着を続けることになる。
したがって、定着モチベーションは、誘因効用と欲求水準の差から生ずる「移動したい欲求」と、貢献効用に影響を与える「移動の容易度」という二つの要因に依存する。さらに、この二つの要因の決定要因としては、次のものがあげられる。まず、「移動への欲求」は、職務満足の大きさと企業内配置転換の可能性の大きさによって決定される。すなわち、従業員は、自分が遂行している職務から得られる満足が大きいほど、「移動したい欲求」はより小さい。また、不満足を感じた従業員が、同じ企業内の他部門に配置転換される可能性が大きいときは、それによって異なった職務につく機会があることを知覚するため、不満足が緩和され、「移動への欲求」が減少する。次に、「移動の知覚された容易度」は、従業員によって知覚される企業外部の代替的機会の数によって決定される。この代替的機会とは、従業員が、当該企業を離脱するとしたときに具体的に移動の対象として知覚する他の企業での職務のことをさし、再就職の機会を意味する。一企業外部の代替的機能の数は、景気の水準、従業員の個人的属性、従業員が知見しうる他企業の数などに依存する。すなわち、景気水準が低いほど、再就職の機会は少ない。また、個人的属性については、男性よりも女性の方が、若年層よりも中高年層の方が、社会的地位の高いグループよりも社会的地位の低いグループの方が、再就職の機会は少ない。




