能力主義(ability principle)
人事管理の基本原則として、(1)年功主義、(2)能力主義(ability principle)、(3)業績主義(performance principle)とに分けることができる。年功主義は、給与や昇進人事の決定基準として、学歴と年齢という本人の属人的基準が支配的なウエイトをもつものをいい、日本の伝統的な人事管理を特徴づけてきたものである。能力主義は、各自の職務遂行能力を評価して、各自の能力を給与決定の基準とする職能給を採用し、人事考課によって昇進を決定し、情実人事を排除するとともに、教育訓練への投資によって各自に対してできるだけ能力開発の機会を増やし能力向上をはかる。それが伝統的な年功主義からの一歩前進といえる。しかし、能力主義は属人主義の域を脱するものではなく、各自の職務遂行能力を客観的に評価する科学的手段が不十分であるために、能力の評価が学歴や年齢という伝統的な価値基準が強く作用するという欠点がある。さらに職能給の下では、本人の能力に相当する職位についていない場合でも、本人の能力の格付けによって給与を支払わなくてはならない。各人の潜在的な能力とそれが職務遂行を通じて顕在化する業績との間にギャップがあるかぎり、能力主義にはまだ配分の不経済性が残されているのである。
業績主義は、科学的手法を用いて客観的に測定できる各人の業績を給与決定や昇進人事の決定の基準としようとするものである。まず、職務分析を行い、職務分類体系を確立して職務給の決定を行う。昇給については、従来の年功昇給はストップし、業績昇給と昇進昇給にかぎられることになる。さらに、人事考課は、業績評価と能力評価に分け、後者は配置転換や昇進の人事決定、教育訓練の基礎とするのに対して、前者は昇給と賞与配分の決定の基礎となるものである。企業の存続と成長をはかるために、従業員に対して誘因(給与や昇進)と貢献(業績)のバランスを確保し、協働的意思を高めことが人事管理の基本的命題をなしている。誘因と貢献のバランスを確保するためには、誘因の配分の経済性を高めていく必要があり、そのために、能力主義からさらに業績主義に移行することが要請される。




