ナレッジ・マネジメント(knowledge management)
知識を重要な経営資源として捉え、その獲得、創造、活用、蓄積を通じて継続的なイノベーションの創出と企業価値創造を促す経営の理論や実践手法をさす。1990年代には優れた経営手法、経営理論として多くの企業に浸透し実践されてきた。近年のコンピュータ・ネットワークの発達や無形資産、知的資産活用の重要性の高まりにともない、再度注目を集めている。実際にCKO(chief knowledge officer 知識担当役員)を置き、企業内でデータベースを構築し、知的資産の一元管理と効率的活用を目指して、より実践的なナレッジ・マネジメントに取り組む企業が増えている。詳しい内容は以下のとおりである。
企業などの組織において、その共有資産としての「知識」の発見、蓄積、交換、共有、創造、活用を行うプロセスを体系的な形でマネジメントすることをいう。あるいはそうした知識の創造・活用の仕組みを事業プロセスの中にビルトインし、生み出された知識を製品やサービス、業務プロセスの革新に具現化することで組織全体の競争力強化を目指す経営手法のことをいう。
ナレッジ・マネジメントは、一橋大学大学院の野中郁次郎教授と竹内弘高教授の『The Knowledge-Creating Company』(オックスフォード大学出版/1995年)を契機として学産で注目を集め、このアプローチによる研究や取り組みなどが急速に広がった。同書のテーマは「組織における知識創造(ナレッジクリエイション)」、そして「知識創造プロセスのマネジメント」である。これ以前にも経営資源としての知識に注目する論調はあったが、野中と竹内は、企業組織にとって知識の「処理」ではなく、「創造」の重要性を指摘した。今日的なナレッジ・マネジメントはここを出発点にしている。
IT分野においても1990年代半ばから、「ナレッジ・マネジメント」をうたうシステムやソリューションが登場したが、その多くはグループウェアやナレッジベースであった。CSCWを基礎とするグループウェアは「協調作業」「知識の共有」、エキスパート・システムに由来するナレッジベースは「知識の蓄積・検索・再活用」がその本質で、ナレッジ・マネジメントでいう「場」(システム場)を提供する点-すなわちナレッジ・マネジメントのインフラの一端として重要だが、それだけで上述の創造的なナレッジ・マネジメントは実現されない。
経営学者ピーター・F・ドラッカー(Peter F. Drucker)は『ポスト資本主義社会』(1993年)で、知識経済においては知識だけが新たな価値の源泉として「唯一意味のある資源」だと指摘したが、その唯一の経営資源である知識は簡単に陳腐化する。企業の競争力を劣化させないためには、常に組織内で新たな知の創造を繰り返していくことが必要なのである。
野中・竹内が組織的知識創造の理論として提出したのが、SECIモデルである。これは、知識は個人に依存するという西洋哲学的な視点から離れて、個人と組織は知識を通じて相互作用するという前提に立ち、組織メンバー各人が持つ知識(暗黙知と形式知)の絶え間ない交換と実践によって、知の再生産を促進するサイクル(スパイラル)を形成することを目標とする。
ナレッジ・マネジメントという語は、日本語では「知識管理」「知識経営」と訳されるが、前者を「知識を管理すること」「知識共有・活用を行うための仕組みを管理すること」、後者を「知識資産に基づく経営」「知識創造をビジネスプロセスに組み込んだ経営」と意図的に使い分けられている場合がある。




