配当政策(dividend policy)
配当は、株主の出資に比例した企業財産の分配一般を意味するが、ゴーイング・コンサーンとしての企業の配当という場合は、税引後当期純利益の分配を意味する。したがって、配当政策とは、利益のうちどれだけを、いかなる形態で、どのようなタイム・パターンで分配するかに関して企業が採用する方策である。配当支払の形態の観点から、現金配当(cash dividend)と非現金配当である現物配当(property dividend)、債券配当(scrip dividend)、社債配当(bond dividend)、株式配当(stok dividend)に分類される。また、分配の時間的配分の観点から、安定配当政策(stable dividend policy)と利益型配当政策(earnings-pattern dividend policy)に分類される。配当政策に関する現代の分析的財務論の最大の争点は、当期処分可能利益剰余金の配当と留保利益への分割の割合の如何(つまり、配当支払率 dividend payout ratio ないし配当性向の決定を)が株主の富の極大化のために行動する企業の株価に影響を及ぼすか否かにある。
ミラー(Miller,M.)とモジリアーニ(Modigliani,F.)は、企業の将来の投資計画とそれから得られる将来の営業利益の流れを所与とし、したがって配当決定と資本調達決定とが不可分である世界を想定すると、配当政策の変更は、同時に投資計画を現在株主の再出資に等しい留保利益で金融するか新株主の参加を認める増資で金融するかの選択でもあるために現在株主の受け取る投資報酬の実現形態(当期の配当所得か将来の配当増を資本還元した株価増価による当期の資本利得か)に差を生ぜしめるが、総報酬額(配当所得+配当落株価)には影響しないために、株主は異なる配当政策に対して異なる評価率(自己資本コスト)を適用するはずは無く、株価は配当決定と独立であるという配当政策無関連命題を、投資家の合理的行動、税金や取引コストの存在しない完全資本市場を仮定の下に、確実性世界と不確実性世界の双方について論証した。かかる無関連命題は、配当決定が受動的な残余政策(passive residual policy)であることを含意する。
資本コスト以上の利益をあげる有利な投資機会があればまず留保利益で金融し、そしてなお利益に余剰があれば株主に配当として分配され、逆に留保利益で金融しきれなければ増資をし、したがって、当期の配当はゼロとなる。これに対して伝統的立場を代表するゴードン(M.Gordon)は、配当1ドルの増加が将来の配当増による同一時点の1ドルの株価上昇よりも確実であることは、遠い将来の事象ほど不確実であることから明白であるとし、株主は配当と資本利得の間の選択に無差別でありえないと論じ、配当、株価関連説を主張している。ほとんどの企業が一方で配当をしながら他方で同時に増資をしている現実を説明するには、投資家の間に資本利得よりは配当に対する正味の選好が存在し、かつこの選好が留保利益金融と新株発行とのコストの差異を相殺するに十分強いことを論証する必要があろう。




