物的流通戦略(physical distribution strategy)
企業における物と情報の流れのシステムを物的流通といい、それは原材料の納入-工場内運搬-在庫-包装-出荷-輸送-倉庫-配送などの各構成要素からなっている。物流費用は、輸送費、在庫費、包装費からなっている。一方において需要の個性化や多様化に対応して製品の多様化がすすむにしたがって、在庫量が増え、また、物流の取扱い単位が小口化してくる。他方において人件費の上昇によって、物流費は上昇し、製品価格の15~30%を占めることも稀ではない。物的流通システムの効率化をはかり、サービス・レベルを維持しながら、物流費を最小にするための物的流通戦略は、ますますその重要性を高めている。
物流戦略の決定にあたって、システム・アプローチをとることが、重要である。物流システムは、相互作用関係にある多数のサブ・システムからなっており、各サブ・システムの部分最適化は必ずしもシステム全体の最適化につながらないからである。たとえば、運賃だけをみると、自動車輸送より鉄道輸送の方が安い。しかし、自動車輸送は、配送日数が短く、サービス・レベルを上げ、顧客からの代金回収を早めるという効果をもっている。物流戦略の主な対象として、(1)ロジスティック戦略、(2)配送システム、(3)工場内運搬システム、(4)在庫管理システムに分けられる。
(1)ロジスティック戦略;どのような数と規模の工場、倉庫ないし流通センターを何処に立地することによって、サービス・レベルの向上と物流費の削減をはかるかという戦略が、ロジスティック戦略である。それには、①直送システム戦略と、②流通センター戦略とがある。①直送システム戦略;各地域に工場を分散立地してその地域の小売店や消費者に直接に配送するシステムを直送システムという。それによって、配送日数を減らし、運賃を節約し、輸送途中の破損や品質劣化を防ぎ、アフター・サービスの向上、地域PR効果によって競争上の優位にたつことができる。腐敗しやすい食品、運送によって品質劣化を生ずるビール、あるいは規模の経済性の大きくない製品について有効な戦略である。あるいは規模の経済性のある場合、部品や原料を集中生産して組立工場や瓶詰め工場に分散する戦略も有効である。②流通センター戦略;生産の規模の経済性が大きい場合、生産を集中化し、各地域に倉庫を立地する必要があるが、多数の小規模の倉庫を集約して流通センターを設ける戦略は、物流の取扱い単位の大口化と物流情報のシステム化によってシステム効率を上げることができる。
(2)配送システム;配送システムの設計にも、システム・アプローチをとることが有効である。各事業部がそれぞれ輸送業者と交渉してトラックの手配を行うよりは、システム・アプローチの見地から、本社物流部で、配車を集中管理することによって、トラックの積載効率、稼動率、実車率(空荷で走らない比率)を高めることができる。物流システムに対するシステム・アプローチを全工場、全社の範囲だけでなく、外部の運送業者や外注の協力工場にまで及ぼしていくことが、重要である。
(3)工場内運搬システム;工場の各部門の需要に合わせて、部品や材料の流れ、タイミングやルートを計画することによって、人と設備の利用効率を高めることができる。工場の入口から材料が搬入されて工場の出口まで製品が出荷されるまで、物の流れが直線的であり、クロス・ホールやバック・ホールがないほど、効率的である。次に、物流の作業方法や運搬器具について、"one best way"を発見し、それを標準化することが重要である。運搬器具として、コンベア(ベルト、レール、ローラー、エレベータなど)、リフト機械(クレーン、ホウイスト、フォーク・リフトなど)などがあるが、つねに最善のものを選択し、これを標準化することによって、作業の方法も標準化される。パレタイゼーションにおいて、パレットの大きさや規格を得意先や外注工場を含めて、標準化することによって、パレットのコストとその取扱いコストが削減される。
(4)在庫管理システム;在庫管理を適正にすることによって過剰在庫や在庫不足を生じないことが必要である。在庫不足を生ずると、緊急の発注や運搬がコスト高の原因となるばかりでなく、全体の物流の直線的な流れを乱すことによってコスト高を発生させる。
参照 ⇒【在庫管理】




