役割理論(role theory)
ミード(G.H.Mead)に源流をもち、その後リントン(R.Linton)、パーソンズ(T.Parson)、マートン(R.K.Merton)によって展開された社会学上のアプローチで、役割(role)の概念によって特定の社会システム、文化システムや組織における個人の行動を説明しようとするものである。役割理論以前の伝統的なアプローチでは、地位(status)の概念を用いて、一連の権利と義務をともなう社会システム内のポジションをあらわしてきた。リントンは、一定の地位を占めるようになった人に、地位に応じた権利と義務が与えられるばかりでなく、他の人びとによってその地位の占有者の行動に対する期待が生ずることに注目した。特定の地位の占有者が、その地位と関連をもつ他の人びとの抱く形式化された期待に指向して行う行動のことを役割行動(role behavior)という。ここから役割期待(role expectation)の概念も生み出された。
マートンによれば、役割理論は、さらに役割群(role set)の概念を展開することによって、伝統的アプローチと袂を分かつことになった。地位は、それと結びついた単一の役割を含むのではなく、一連の役割を含むという考えから、役割群の概念が生まれた。たとえば、大学病院という一つの社会システムにおいて、医学生という特定の社会的地位を占める人は、指導教官に対して、学生の役割を果たすが、同じシステムの内部にいる彼の同僚の学生、他の医師、看護師に対して、それぞれ一連の他の役割を果たす。役割群の概念と関連して、役割葛藤(role conflict)の概念を生じる。特定の地位を有する一連の役割群のうち、ある役割を果たすことが、他の役割を果たすことと矛盾する場合に生じるコンフリクトのことを役割葛藤という。役割行動、役割期待、役割群、役割葛藤などの概念を有する役割理論は、組織構造の特性を記述するのに役立つのである。
マートンによれば、まず、特定の地位は、互いに結びつきあった一連の役割を含むので役割群の概念によって地位の占有者とさまざまな人びとを関連づけることができる。また、役割群をうまく接合して、役割間の葛藤を低減する社会メカニズムを突き止めることができる。さらに、役割群を構成しているいろいろな成員の役割期待を統合する社会的メカニズムを突き止めるという組織構造上の問題に、役割群の概念を用いることもできる。




