流動性分析(liquidity analysis)
企業の資金的支払能力の状態を流動性という。企業の支払い能力は、まず現金預金および手持有価証券に依存し、次いで短期に現金化することが予定される受取勘定と在庫に依存している。しかし、受取勘定や在庫が100%現金化するとは限らない。流動性の低下は、資金不足を生じ、企業を倒産に導く直接の原因となるばかりでなく、新製品の開発、多角化などには十分な運転資本を必要とするために、流動性の低下はそのような市場競争に立ち遅れをきたすことにもなる。しかし、流動性が高すぎるときは、余剰の運転資本は利益を生まないのであるから、収益性と流動性との間には常に矛盾が存在している。適正な流動性を維持することが、企業の生存と成長のためには要求される。流動性の適否を診断する財務比率として、酸性試験比率(当座比率)、流動比率、運転資本比率、負債比率、固定比率などが用いられる。過少資本は、負債比率、固定比率を悪化させて、流動性を低下させる。設備の過大投資は、固定比率や流動比率を悪化させ、流動性を低下させる。販売不振や品種の過多は、在庫を増やし、酸性試験比率(当座比率)を悪化させ、流動性を低下させる。
流動性分析には、静態分析と動態分析の区別がある。前者は、上記の財務比率に示されるように、一時点における資産、負債、資本の間の関係比率によって流動性を測定するものであり、一定の適正比率に対する実際比率の比較によって流動性の適否を判定する方法である。後者は、景気変動のサイクルや資産回転率などの動態的要因を考慮に入れて、流動性を分析する方法である。まず、景気が回復に向かう景気上昇期には、受取勘定や在庫が増え流動比率が向上することは、流動性が高いとみてよい。その時期には、受取勘定や在庫は短期に確実に現金化されるからである。しかし、景気下降期になって受取勘定や在庫が増え、流動比率が向上することは、かならずしも流動性が高いという根拠にはならない。その時期には、受取勘定の回収期日の延期や、在庫には短期には現金化しないデッド・ストックが含まれるからである。それらの流動資産は、運転資本の供給源ではなく、逆に需要源となり、資金不足の原因をなしてくる。かくて、受取勘定の年齢調査や在庫の中味を精査しなくては、流動性の実体はつかめない。
また、景気上昇期には、銀行の預金準備率は高いので、銀行からの借入は容易であるから、酸性試験比率(当座比率)は余り重要性をもたない。景気下降期には、銀行の預金準備率は低下しているために、銀行借入はかならずしも容易でないので、流動比率よりは酸性試験比率(当座比率)が流動性の測定尺度として重要性をもってくる。このように、企業の環境の変化によって、諸財務比率の持つ意味は異なってくる。
次に、流動性の比率は貸借対照表項目からなる静態比率であるが、流動性の動態をとらえるためには、諸資産回転率の動態比率を同時に考慮する必要がある。固定比率が100%を超えていても固定資産回転率が業界の標準にかなり高い場合には、流動性にさした懸念はない。棚卸資産の在庫の増加によって酸性試験比率(当座比率)は低下していても、受取勘定回転率や在庫回転率が向上しているときは、流動性に懸念がないといえる。しかし、企業には必ず不測の事態が起こるのであるから、それに対応するための短期的流動性は、究極的には現金および手持有価証券に依存するものであり、したがって、酸性試験比率(当座比率)が最重要な流動性比率であるといえる。
参照 ⇒【流動比率】【酸性試験比率】【固定比率】【運転資本比率】【負債比率】




